Farewell, Firefox

2025-02-07

私は高一の頃からFirefoxを使ってきた。Proton UIが導入されたのがきっかけだった。
GoogleがChromeにやたら評判が悪かったFLoCを導入しようとしていた時期であったこともあり、それまで長く使ってきたChromeから乗り換えた。
それ以降長らくFirefoxは私のメインブラウザだった。一時期BraveとかVivaldiを試してた時期もあったけど、結局Firefoxに戻ってきた。

そんな私が最近Firefoxから別のブラウザに乗り換えたという話。

Firefoxへの不満

Firefoxには一般的なブラウザに見られるプロファイル機能が存在しない。
大学に入るまではこれでも問題なかったが、大学生になり日常的に学校アカウントを使うようになると不便を感じるようになった。
コンテナータブで代替していたものの、公式のアドオンのクオリティが絶望的で、一回アップデートか何かの拍子に無効になると全てのコンテナが削除されてしまうという到底使えない代物だった。

加えてAndroid版の出来があまりにも悪い。悪いだけならまだしもセキュリティ上の問題がかなりある(これに関しては後述)、バックグランドに回すとすぐタスキルされるなどお話にならない。
Firefoxだけを使ってればさほど気にならなかった問題も、他のブラウザを使うとかなり気になるようになってしまう。

またメイン機がmacOSになったこともFirefoxに不満を感じるようになった要因の一つだった。OSのアクティビティモニターでディスク欄を監視すると、ほぼ常にFirefoxがディスク書き込み量の上位にいる。
about:configキャッシュを無効にしたりと非公開の設定を調整することで多少マシにはなったが、それでも他のブラウザと比べてそれなりの量を書き込んでいた。

プライバシーには優れてるけどセキュリティ的にはそうでもない

Firefoxの大きな利点の一つとして、Chromium系のブラウザと比べてプライバシー保護性能に優れている(フィンガープリントの餌になりそうなAPIを塞いでたり、デフォルトでアンチトラッカーが搭載されてたりする)ことが挙げられる。

しかし優れているのはプライバシーだけで、セキュリティという面では実はFirefoxはChromiumと比べてだいぶ劣る。
このブログによくまとめられているが、簡単に言うとサイト間の隔離が他のブラウザと比べて弱く、またROP/JOP攻撃を緩和するメモリ保護機能がChromiumやWebKitと比べて緩い、メモリアロケータがChromiumではPartitionAllocというセキュリティ重視のものが使われてるのに対して、Firefoxではパフォーマンス重視のJemallocベースのものを使用しているなど、全体的にセキュリティという面ではChromiumの方が優秀とかいう話だった。

またAndroid版のFirefoxはさらに酷く、サイト間のまともなサンドボックスが存在しない。実際にセキュリティ(と “プライバシー”)重視のAndroidのカスタムROMでは、Firefoxの利用を推奨していない

実際自分で使っていても、ChromiumはmacOSのキーチェーンを使って、SafariはTCCを使ってCookieなどのブラウザのデータを保護するのに対して、Firefoxは全て~/Library/Application Supportに平文で保存されてたり、SameSiteが明示的に指定されてないCookieの扱いがChromiumではLaxだがFirefox(とSafari)ではNoneになるなど全体的に緩い印象を受けていた。

ブラウザは日常的に使うし、信頼できないスクリプトやコンテンツを頻繁にロードするし、さらには機密性の高い情報まで扱うという性質から、なるべく安全なものであってほしい。
これが理由だけでFirefoxから乗り換えた訳ではないけど、個人的には無視できないかなり大きい要素だった。

その他、悲しい理由

以上のようなブラウザそのものに対する不満に加えて、Firefoxを使ってるとGoogle検索でのreCAPTCHAが出やすい、YouTubeと相性が悪い、各種サイトにあるreCAPTCHAの難易度が上がる、NHK+とか非対応サイトがそれなりに出てきた、みたいな社会的(?)な理由もある。
良くない理由ってことは分かってるけど、実際使う上で支障になる点が出てくるのは単純に困る…

何に乗り換えるのか

ブラウザ探しの旅と称して色々なブラウザを試している。Edgeはメモリセーバーがかなり優秀で好印象だった。SafariはFirefox並みのプライバシー保護機能を持ちながらセキュリティもまともで、たまにクラッシュする現象さえなければメインにしてもよかった。
どっちもページの翻訳中にフリーズしたりとかで細かいところが結構ストレスだったので、今はGoogle Chromeに原点回帰してるがここで落ち着くかは分からない。BraveとOperaは運営会社が信用ならないので却下、Vialdiはシンプル派の私にはあまり合わない感じだった。

気力が無限にあった頃は脱Googleと称して色々遊んでみたり、逆張りしてLinuxデスクトップを常用したりする気力があった。
その頃の気力が今にもあったらFirefoxを工夫して使い続けるとかしていたかもしれない。

今の私は「いくら自分のデバイスを思い通りにできる “自由” を手に入れたところで、現実そのものが不平等で不自由なんだからその代償に大きな意味はない」とか考えるようになった。(これはそこまでネガティブな意味じゃない、ただ自分が自由ソフトウェア的なcontextでの “自由” に大きな意味を感じなくなっただけ)

こういう思考に落ち着くようになったのはおそらく病気が直接的な原因だけど、病気になってなかった自分も結局は似たような結論に辿り着いていたんじゃないかな、少なくとも今の私はそう思ってる。

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